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こうしてエビフライは出来た。

Written by Kazuya Akanuma

時は明治時代。メンチカツにうんざりしている男がいた。

男はもう何百回も揚げてきたメンチカツを見ながら必死で考えていた。

新しい西洋料理として大将が考案したメンチカツと豚カツがブームになり、勤め先の店は大繁盛している。
大将が開発したメンチカツのミンチにした肉汁を閉じ込めるための工夫や、タマネギの申し分のない配分。そして揚げたてのサクッとした食感は人々を虜にした。

だが、男は考えていた。

どうしてもメンチカツが好きになれないのだ。

あの、食べた後に襲ってくる軽い胸焼け。じゅわっと口の中で広がる肉汁の感じがどうしても男にはなじめないのだ。

男は考えていた。

他のモノを揚げたい。

メンチカツじゃない。豚肉でも無い。他のものを揚げてみたい。

お店が閉店後、男は一人厨房にこもった。

そこには食に対する探究心しか無かった。
もっと色んな物を揚げてみたい。

男が先ず選んだのは野菜だった。肉の脂がどうしても胸焼けに繋がると考えて、野菜を揚げ物にした。

確かにサッパリとしていて美味しく揚がったが、満足できるメインになるような料理とは言いがたかった。

他に何が揚げれるだろう。

試行錯誤した挙句、男は魚介類に手を出した。ホタテ。イカ。白身魚。どれもそれなりに美味しいがインパクトは少ない。

色々と試しながら彼は天ぷらを思い出していた。

そうだ。天ぷらの食材は行けるかもしれない。

彼は車海老を揚げてみた。こんがりと黄金色に揚がった海老のフライは身はプリプリとしていて、衣にソースをかけると絶妙な美味さに変化した。

あぁ。これだ。この味だ。

美味いじゃないか。これならあのメンチカツに負けない人気商品になるぞ。

こうして、メンチカツで胸焼けをしたある男の類まれなる情熱がエビフライを世に誕生させたのである。

 

そんな妄想をしながら、僕はいま、エビフライが猛烈に食べたい。

About the author

Kazuya Akanuma

株式会社BNF 代表取締役
株式会社ブレインネット 取締役
ITの会社と、Cafe&BARとお寿司屋さんを経営中。